キリスト教式 結婚式
日本で行われる挙式の約7割以上を占めるのが「キリスト教式結婚式」といわれています。
「キリスト教式結婚式」とは、キリスト教徒の結婚式を模した結婚式で、本物の教会や聖堂でなく、結婚式のためだけにつくられた教会風の施設(いわゆる「結婚式用のチャペル、大聖堂」)で挙げる挙式のことです。
信仰とは無関係に、キリスト教式を望むカップルが非常に多くなっています。
ほんとどのホテルや専門式場ではチャペルが設備され、キリスト教式の挙式プランを準備しています。
キリスト教式の結婚式 進行
キリスト教式の一般的な進行は下記になります。4~14は教会、教派によって進行の順番が変わったり、無い場合もあります。
- 開式
牧師(または神父)が司式して、開式を宣言します。
※司式(ししき)とはキリスト教で儀式を執り行うこと。 - 新郎入場
新郎が入場して祭壇の前まで歩いてき、花嫁の入場を待ちます。 - 新婦入場
エストコート役(通常は実父)と一緒に、花嫁が入場します。
花嫁は中央通路(和製英語ではバージンロード)を進み、エスコート役が新郎に新婦を引き渡します。 - 聖書朗読
牧師が聖書を朗読します。朗読する箇所は教会によって異なります。 - 祈祷
牧師が神に祈りを捧げます。 - 式辞
牧師がふたり、参列者に式辞を述べます。 - 誓約
牧師の問いかけに対して、新郎、新婦が答えながら結婚を誓約します。
映画やTVで見かける「健やかなるときも、病めるときも、喜びのときも・・・」が誓約の儀です。 - 指輪の交換
新郎、新婦の順番に相手の薬指に指輪をはめます。 - ベールアップ
ウエディングベールに隠れている花嫁の顔が見えるように、新郎がベールを上げてキスをします。 - 結婚証明書に署名
新郎、新婦、牧師が結婚証明書にサインをします。サインした結婚証明書は参列者にも確認できるように掲げられます。 - 祈祷
結婚証明書にサインされたことで、再び祈祷します。 - 結婚宣言
ふたりが夫婦となったことを牧師が宣言します。 - 賛美歌合唱
ふたりの結婚を祝福して賛美歌を参列者も一緒に合唱します。 - 祝祷
儀式の最後におこなわれる祝福のお祈りをします。 - 退場
参列者からの拍手、賛美歌の中、バージンロードを歩いて新郎新婦が退場します。
https://www.youtube.com/watch?v=sRNhMmUgM68
キリスト教式の教派
キリスト教での結婚式の意味や様式は、教派によって異なります。ここでは、どのような様式があるのか簡単に説明します。
キリスト教には3つの大きな教派があります。
- カトリック
主にヨーロッパに信者に多い - プロテスタント
主にアメリカに信者が多い
- 正教会
主にロシアに信者が多い
元々はカトリックがあり、そこから正教会、プロテスタントが教派として派生しました。
さらにプロテスタントから派生した「ルター派」「バプテスト」「会衆派」「聖公会」「メソジスト」などもあります。
信徒ではないカップルの結婚式を広く容認しているのは「プロテスタント」または「カトリック」で、この2つの教派だけは理解しておいてください。
カトリック
カトリック教会は、正統教義を奉ずるローマ・カトリック教会を指します。
イタリアのローマ郊外のバチカン市国(国家)がカトリックの中心で、ローマ教皇が住むバチカン宮殿、サン・ピエトロ大聖堂などがあります。
映画「ダヴィンチコード」シリーズの舞台と聞けば馴染み深いでしょうか。
映画ではローマやバチカン市国の有名な施設が登場します。
分かりやすいカトリック教派の特徴
- 教会が豪華で綺羅びやかです。
- 神拝することを「ミサ」と言います。
- 儀式、ミサがおこなわれる場所を「聖堂(みどう、せいどう)」と言います。
- 聖職者のことを「神父」「○○様」と呼びます。
- 神様を称える歌は「聖歌」です。
- 映画、TVで見かける胸で十字を切る仕草。
カトリックでは結婚式は男性と女性に課せられた義務(「秘跡」のひとつ)とし、結婚式も神聖な儀式として進められます。
各国のカトリック教会では通常、信徒以外の挙式を行うことはありませんが、日本のカトリック教会では教皇庁の特別な許可によって、片方あるいは双方がカトリック信者でない場合でも、教会での一定期間の「結婚講座」への出席を条件に挙式を行うことを認めることがあります。
結婚の儀式は「婚姻の祝別式」と「婚姻のミサ聖祭」の2つの儀式からなっています。
婚姻の祝別式
「婚姻の祝別式」とは、結婚式を指し、訓話、婚姻の誓約、結婚指輪の交換の順で進められ、そのあと二人ともカトリック信者の場合のみ「ミサ聖祭」が行われます。
ミサ聖祭
「ミサ聖祭」は、キリストが定めた神の特別な恵みのしるしとされ、聖歌隊による聖歌の合唱、司祭の聖書の朗読、聖体拝領の順に行われます。
聖体拝領とは、主の御体と御皿であるパンとぶどう酒を、聖体拝領台の前にひざまづき、共に受け、新郎・新婦がかたく結ばれる儀式のことをいいます。
プロテスタント
プロテスタントとはマルティン・ルターを起因に16世紀に始まった宗教改革運動によって、カトリック教会から分離・成立したキリスト教各教派の総称のことをいいます。
プロテスタントとは「意義を唱える」という意味で、カトリックが教会とその教義を重視するのに対して、プロテスタントは特に個人の福音主義、信仰疑念を重視します。
豪華なカトリックに比べてプロテスタントは極めて質素です。
電気を使わず、自給自足で信仰生活を送る「アーミッシュ」もプロテスタントです。
日本では、ローマ・カトリックと対比してプロテスタントのことを「新教」と呼ぶこともあります。
分かりやすいプロテスタント教派の特徴
- 聖書を重んじるため、教会がシンプルで質素です。装飾などはほとんどありません。
- 神拝することを「礼拝(れいはい)」と言います。
- 儀式や神拝する場を「礼拝堂(れいはいどう)」と言います。
- 聖職者は「牧師」または「○○先生」と呼びます。
- 神様を称える歌は「賛美歌」です。ゴスペルはプロテスタント教派からの生まれた宗教音楽です。
一般的にホテルや専門式場のチャペルで行うプロテスタントスタイルの挙式は約20~30分です。
司式者でもある牧師が指輪交換や証明書へのサインなどをスムーズに行えるよう、指示を出してくれます。
正教会
正教会は11世紀の東西教会の分裂から誕生した教派で、ローマ・カトリック教会やプロテスタント諸教会が西ヨーロッパを中心に広がったのに対し、キリスト教が生まれた中近東を中心に、ギリシャ、東欧から、ロシアへ広がりました。
「東方正教会」や「ギリシャ正教」「ロシア正教」と呼ばれる教派も「正教会」のことです。
長年カトリックと対立関係にありましたが、2016年にカトリックとロシア正教が歴史上、初の会談をおこない和解への道を進めています。
※ロシア政府は正教では無く、組織として認めています。
分かりやすい正教会の特徴
- 教会はカトリックほどではありませんが綺羅びやかな装飾も施されています。
- 神拝することを「礼儀」「聖体礼儀」と言います。
- 儀式、礼儀がおこなわれる場所を「聖堂(せいどう)」と言います。
- 聖職者のことを「神父」「主教」と呼びます。
- 神様を称える歌は「聖歌」です。
- 映画、TVで見かける胸で十字を切る仕草。
正教会においては結婚式も機密のひとつで、正式には「婚配機密(こんぱいきみつ)」と呼ばれます。全ての機密と同様、正教会の信徒のみが受けることができます。
正教会の婚配機密は司祭による「司祷」のもと聖堂で行われるものであり、結婚式場などで行われることはありません。
正教会における婚配機密は華やかで、 聖堂入り口に近い所で行われる指輪の交換と、聖堂中央で行われる戴冠礼儀とで構成されています。婚配機密を受ける事が出来るのは信徒のみですが、信徒ではない人も結婚式に参祷するのは自由であり、親戚・知人の出席はむしろ奨励されます。
バプテスト・会衆派
プロテスタントに分類される教派の中でもバプテストや会衆派では、会衆(教会員・信者)の同意により、神の導きと見なし結婚が成立します。
そのため結婚式は比較的オープンでで、新郎新婦のどちらかが信者の場合、結婚式は教会関係者と、披露宴は友達・友人達と一緒にといった場合が多く見受けられます。
両方が信者の場合は、結婚式に引き続き披露宴(祝会)を行いますが、近年は行うカップルが減ってきているようです。このため結婚式の出席者が時には披露宴の出席者を超える場合もあります。
バプテスト、会衆派はプロテスタントから派生したため、特徴や聖職者の呼び方などはプロテスタント教派と同じです。
日本でのキリスト教式ウエディングの歴史
日本での結婚式の70%が、キリスト教式ウエディングとなっていますが、キリスト教式ウエディングが流行したのは80年代半ばからです。
それまでは神前式がほとんどで、ホテルや結婚式場には神殿はあってもチャペルはありませんでした。
教会で結婚式を挙げるのはキリスト教信徒で、信徒以外の挙式を断る教会が一般的でした。
中には信徒でなくても教会の礼拝に何度か通い、キリスト教としての婚礼を理解する「結婚講座」を受けることで結婚式を認める教会もありました。
キリスト教式 挙式ブームの兆し
70年代から結婚式だけをしたいカップルや、二人だけ、少人数だけで結婚式を挙げたいカップルなど、教会で結婚式を挙げるカップルが増えていきます。また、芸能人が教会で結婚式をおこなったことも人気のきっかけとなりました。
キリスト教式ウエディングの人気を察して、ホテル、結婚式場もチャペルを作り始めます。
キリスト教式 挙式の一大ブーム
1980年代に入ると、キリスト教式ウエディングをおこなうホテル、結婚式場に牧師を派遣するキリスト教ブライダル宣教団が創立します。
ブライダル宣教団によりキリスト教式の挙式がオープンになり、ホテル、結婚式場の内部、敷地に教会が次々と建てられました。
ウエディングドレス姿に憧れる女性も多く、80年代後半のバブル時代にキリスト教式ウエディングが一気に広まりました。
バブルが終了した1990年以降は、新しく建てられる婚礼施設には教会は建てられても、神前式の神殿は無い婚礼施設も多く、キリスト教式ウエディングの人気の高さが伺えます。
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